湧 然

奈良美智 自選集[ペインティング]:青幻舎

 

「興味が湧く」

その心象が体感を以って露わになる

心地よい寒気の様な

いつもより目に入る光量が多くなる様な

使っていない筋肉が動き始めた様な

無痛で顎が外れた様な

 

そんな感覚が走る

たまに

 

奈良 美智(なら よしとも)氏のことは

いろんなメディアを通して以前から知っていたものの

これまで作品に正面から向き合って来てなくて

 

それは

感度が繋がるプラグが備わっていなかったらしい

 

それが

いま自分の時節で繋がって

 

「興味が湧く」以上の

音を立てて噴き出した感度で

彼の作品の中を漂う

 

心の底にある動と静

粗暴と温和

表と裏

 

やわらかい線と表情ゆえか

なおさらに心情を惑わせ

掻き回す

 

背表紙を閉じるまで

3時間半。