説 示

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陰翳礼賛:谷崎潤一郎 著・中公文庫

 

デザインを進める迷いの中

机を囲む書棚に並ぶ背表紙を指で辿り

この御大に尋ねてみようと

 

何度目の訪問だろうか

お会いしたくなること度々

 

垣根が伸びる路地に構える格子の引き戸

指に伝わる滑りの良い

よく手入れされた建具の感触

見所を整えた庭園

長く伸びる縁側

和室に差し込む光と畳の色

天井から壁を舐める適量の静かな影

 

そこに座りなさい

そう言って語り始めるいろいろは

知識と語彙と奇知に富みながら

緩やかに流れる

 

甘みの強い和菓子とお茶の香り

 

示しはこんなところだ

あとは自分で考えなさい

風呂の時間だ

 

ご挨拶して玄関を出る

 

来た路地を戻りながら

お聞きしたいろいろな点と点が繋がり始め

持参しながら出せなかった自問は薄くなっていて

清々しい気分

 

そんな幻想

 

またしばらくご無沙汰するかもしれませんが

折りを見てお伺いいたします。