香立て:自作品/1996
探し物をしていたら出てきた
20代の頃に作った香立て
デザインというのは
自分が作りたいものを作るわけではなく
ニーズやオーダー
または自社やクライアントの売上に結びつくためにモノを作ること
社会人デザイナーになって
社長や先輩に教えられた現実と
思い描いていたデザインへの夢や希望との乖離
若いゆえの葛藤
いま思えば
それがあっての今がある
もがいていた当時を思うと
鼻下がゆるんでむず痒くなる。
あの当時
いざ自分が作りたいモノを思案したときに
精一杯だったのがこの香立てで
仕事漬けで自分の作りたいものがわからなっている様な
創造欲が薄れていた様にも窺えるものの
力の抜けた
仕事の重さから解放されている時の
ただゆるく漂った様子も匂わせる
なんとも愛くるしい
しっとり光る錫の色味
静かに釣竿を構える姿とゆっくり上る煙
いろいろなことを想う
部屋に広がる無邪気な香り。