抜 重

f:id:eiki-works:20200510131827j:plain

 香立て:自作品/1996

 

探し物をしていたら出てきた

20代の頃に作った香立て

 

デザインというのは

自分が作りたいものを作るわけではなく

ニーズやオーダー

または自社やクライアントの売上に結びつくためにモノを作ること

 

社会人デザイナーになって

社長や先輩に教えられた現実と

思い描いていたデザインへの夢や希望との乖離

若いゆえの葛藤

 

いま思えば

それがあっての今がある

もがいていた当時を思うと

鼻下がゆるんでむず痒くなる。

 

あの当時

いざ自分が作りたいモノを思案したときに

精一杯だったのがこの香立てで

 

仕事漬けで自分の作りたいものがわからなっている様な

創造欲が薄れていた様にも窺えるものの

 

力の抜けた

仕事の重さから解放されている時の

ただゆるく漂った様子も匂わせる

 

なんとも愛くるしい

しっとり光る錫の色味

静かに釣竿を構える姿とゆっくり上る煙

 

いろいろなことを想う

部屋に広がる無邪気な香り。